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最高裁判所第二小法廷 昭和30年(オ)90号 判決 1957年3月08日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人宇都宮潔の上告理由第一点および第三点について。

一村内の部落は、財産を有し又は営造物を設けている場合にかぎり、財産区として法人格を認められるのである。しかるに原判決は、被上告部落は、上告人主張の売買当時本件不動産を所有していたものではなく、その他に現に財産を有し又は営造物を設けている事実を認めるべき資料はないと判示しているのであるから、同部落は法人格を有せず、従つて訴訟の当事者となる能力もないものといわなければならない。原判決の趣旨もこれと同一であると認められるし、論旨引用の判例は本件に適切ではない。それ故に論旨はいずれも採用するを得ない。

同第二点について。

本件において、第一審は、被上告人が当事者能力を有しないことを理由に、訴を却下し、第二審も、第一審と同様の見解の下に、上告人の控訴を棄却したものと認められる。原審が本件不動産は被上告部落の所有ではなく、訴外部落会の所有である旨認定したのは、訴訟要件の審査のための必要からであつて、本案に関する判断をしたものではないこと明らかである。論旨は、採るを得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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